シリーズ “Talk your story. Learn new world.” 第3回「学生ジャーナリスト」

chaptertwo/ 2 11, 2019/ 未分類

シリーズ “Talk your story. Learn new world.” 、第3回は学生ジャーナリストの日下部智美さんに登壇いただいた。

〇登壇者の紹介
日下部 智海氏(くさかべ ともみ)
明治大学3年生、学生ジャーナリスト。
1997年生まれ。福岡県出身。明治大学法学部在学。幼少期の4年間を台湾で過ごす。中学生のころから、政治や国際情勢、歴史に興味を持つ。高校3年生の時に、台湾を1人で1周し、海外を旅すことに目覚める。大学に入学してからの28ヶ国を訪れ、その中で多くの難民の方々と知り合い、彼らについての記事を執筆するようになる。2018年に国連大学で開催されたノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス博士の講演会にゲストとして登壇。

ブログ http://www.tomomitravel.site
寄稿記事 https://www.huffingtonpost.jp/author/tomomi-kusakabe/

〇日下部さんが記事を書くようになったきっかけ
大学1年生の夏、ヨルダンを訪れた日下部さんは強盗に遭い、無一文に。
途方に暮れていたところ、偶然出会ったシリア人家族が手を差し伸べてくれた。
彼らは難民であった。
結局彼らは2週間に渡り、日本へ帰る手配や日々の寝食などの面倒をみてくれた。
この出来事が日下部さんの意識を大きく変えた。

「今、”このように”自分が生きていることは偶然に過ぎない」
「つまり自分が別の存在であり得たのだ」
「いろいろな人のおかげで自分はこれまで生きてきた」
「恩返しをしたい」

日下部さんは「恩返し」の手段として、ジャーナリストになることを決心した。
得意とする「文章を書くこと」により、自分の経験を通じてあぶりだした真実を世に発信すると決めた。

〇難民問題
日下部さんは取材中に出会ったパレスチナ難民に問うた。
「一番恐れていることは何ですか?」
何だろうか。明日食べられなくなること?貧困?戦争?
答えは、「自分が世界から忘れられていくこと」だった。

日下部さんは記事の中で、映画「ホテル・ルワンダ」でのセリフを引用している。
「虐殺が映ったこの映像を全世界に流しても、世界の人々は怖いねと言ってディナーの手を少し止めるだけだ」
ルワンダでの惨劇を黙殺した国際社会は、シリアに対して同じ罪を犯した。
「無関心」という罪だ。これは私たちの罪だ。

日下部さんは取材のため、トルコにあるイスラム教の学校で生活をしたことがある。
そこでアブラシードさんというシリア人男性とルームメイトになった。
彼は2011年にシリアでデモに参加したことをきっかけに人生が大きく変わり、妻と子供を養うために難民としてトルコに渡り仕事をしている。
多くの親族や友人を亡くし、幼い子供に会えない日々を過ごす彼のことを語る日下部さんの言葉から、「私はこの友人を救いたいのだ」という感情が伝わってきた。

私たちが日下部さんに出会うきっかけになったのが、まさに彼がアブラシードさんについて書いた記事だった。
この記事をぜひ読んでほしい。
https://www.huffingtonpost.jp/tomomi-kusakabe/syria-reality_a_23536990/

先日、「バハールの涙」という映画を鑑賞した。
ISに奪われた息子を助け出すべく、女性戦闘部隊を結成してISとの戦いの最前線に身を投じたクルド人女性と、彼女たちを取材する女性ジャーナリストの姿を描いた作品だ。
銃弾が飛び交う最前線で取材を続ける女性ジャーナリストに対して、女性戦闘部隊のリーダーが「真実を伝えてほしい」と語る場面がある。
それに対し、ジャーナリストは「真実なんて」と無力感を滲ませる。
「人が信じたいのは将来の希望や夢なの 必死で悲劇から目を背けている」
しかし、こう続ける「それでも真実を追い伝え続けないと」
彼女は戦地で被弾し、片目を失っている。そして変わらない現実に対して無力感を感じている。それでもなお危険を冒して取材を続けるのはなぜか。
「今の私があるのは出会ってきた人のおかげ。伝えることで役に立ちたい」。

日下部さんの動機はこのジャーナリストのそれと同じだ。つまり、「目の前のこの大切な人」の役に立ちたい、ということ。
その態度に強く共感を覚えた。

〇モロッコの児童労働とそろばん
1億5100万人。何を表す人口だろうか。
これは、世界の「児童労働人口」だ。日本の人口よりも多い。
日下部さんがモロッコのビオウグラという町を訪れた際、そこで当たり前のように扱われている児童労働の実態を目撃した。
なぜ児童労働が存在するか。
若い働き手がいないから?貧困?教育費が出せないから?
そこでは、「教育に投資することに親は価値を見出せない」というのが答えだった。
なぜなら、子は代々継がれてきた仕事をまた継ぐことになっていて、幼いうちからその仕事に関わるのが当たり前だからだ。
しかし、教育を受けさせないことは、若者を過激派へ走らせたり、薬物依存に陥らせたりと、子供たちの未来を奪うということに繋がっている現実があった。
この状況を打開するために立ち上げられたNGOがある。
救世主は、なんと「そろばん」だった。
見たこともない道具に子供たちは興味津々、できることが増えるという楽しみを覚え、生き生きした子供たちの様子に親たちも変わっていった。
町の人から寄付が集まり、元生徒たちがスタッフとして関わるようになる、という、まるで映画のようなプロセスをたどり、なんと、結果児童労働がゼロになったのだ。
「この問題をなんとしてでも解決したい」という情熱と「そろばん」というアイディアが融合し、驚くべき結果をもたらしたこのケースから学ぶべきことは多い。

日下部さんは現在大学3年生。「学生ジャーナリスト」としての活動はあと1年と少しで終わる。大学卒業後の1歩をどう踏み出すのか、日下部さん自身もわからないという。
イベント終了後、日下部さんは「伝えても伝えても多くの方に響かないというもどかしさをずっと感じていました」と投稿している。
会が始まり、吶吶と話し始めた彼の表情はどこか曇っているように感じた。
が、その投稿を見て理解した。「どんなに伝えても何も変えられないのではないか」と感じていたのかも知れない。「バハールの涙」のジャーナリストが感じたように。
しかし、こう続けている。「昨日のイベントで突破口のヒントが見つかった気がします。また、初めて報酬というものを頂きました。自分の活動に対し初めて対価を頂いたので、感動し泣きそうになりました。」

今回のイベントはごく小規模だった。しかし、0ではない。
そして参加者全員が日下部さんの思いに心震わされたのは間違いない。
Chapter Twoは日下部さんに心動かされた組織として、今後の活動を全面的に応援したい。